狂喜と月01、情報→行動→死亡
―こわいー
東京裏新宿の一角に佇む寂れた喫茶店の前で少女は体を震わせた。
裏新宿の危なげな雰囲気とは全くかみ合わない少女。
結構な学費で知られる私立女子高校の白を基調としたブレザー姿、
淡い栗色の髪を背中まで伸ばしたストレート、
女性として考えても小柄な肢体、
高校生にしては幼すぎる顔の真ん中には大きな栗色の瞳が
不安げに揺れている。
―ユキ兄についてきてもらうんだったー
彼女は幾度か喫茶店のベルを鳴らそうと試みたが
どうしても鳴らす勇気がでない。
少女―京野都築―は一層体を震わせた。
数日前まで都築はいたって普通の高校生だった。
家庭環境は数年前に両親が他界してから
10違いの兄との二人暮らしだが
両親の莫大な遺産と
大手IT企業の社長である兄の収入で
生活は困ってないし若干妹馬鹿ぎみな兄との関係も良好だ。
すこし変則的な家庭環境だがありえなくはない。
学業の成績も中の上をキープしている。
友人も多くすこし恋とやらにも憧れている。
いたって普通の女子高生だった。
数日前、親友の沙希が殺されるまで。
あの日は兄と自分の誕生日で、
記念にフレンチレストランで食事をとっていた。
午後7時50分ごろに沙希の父から
電話がかかってきた。
「沙希がまだ帰ってきていないうえに電話がつながらない。何か知らないか?」
沙希の家は東横から結構遠い。
しかし30分もあれば着くし何より彼女は夕食を作りに帰ったのだ。
沙希は都築の知る限り約束は必ず守る。
そんな彼女が家に帰ってないなんて明らかにおかしい。
とりあえず6時ごろに東横で別れたこと、こちらからも電話してみる旨を伝え電話を切った。
その後、デパートでプレゼントを買い兄と交換会をして
10時頃家に帰りTVをつけ訃報をきいた。
沙希と都築は幼稚舎からの親友だ。
引っ込み思案で大人しい化粧っけのない清純な印象を受ける都築と
明るく何事も行動に起こし大人びた妖艶な雰囲気をもつ沙希が一緒にいるとよく周りから「仲がいいのが意外」と言われていた。
女性の都築から見ても沙希は綺麗だった。
スラリ長く細い美しい手足、腰まで伸ばした艶やかな黒髪、
黒曜石のような煌きを宿す切れ長の瞳、血を塗ったかのように紅い唇、大きい胸にくびれた腰。
いついかなる状況でも自信に満ちあふれた威風堂々とした佇まい。
それらはどれも都築にはないものだったしほしいものだった。
沙希は都築にとってあこがれの存在だったのだ。
なんとか仇をとりたい!!!!!!
しかし相手は名前も分からない顔も分からない連続殺人犯。
どう考えても無理・・・・・。
警察にでもコネがあれば・・・・。
諦めかけた時、都築のもとに1つの噂が舞い込んだ。
「裏新宿のcafé LuNaに行けばなんとかなる」
それは以前からチャット友として交流があったブラメタという人物が教えてくれた。詳しいことは分からない。
しかし、行かないよりはいいだろう。
そう思い都築は今その店の前にいる・・・・はずだった。
彼女は扉を開ける勇気がなかった。
否、命の危機を感じ取っていた。
扉越しからきこえる音は明らかに戦場のそれだった。
打ち上げ花火にも似た破裂音と甲高い金属音が絶え間なく響き渡り、
途中罵声とガラスの割れる音が混じる虫すら避けて通るくらいあからさまに嫌な協奏曲。
喫茶店の向こうにはアフガンかどこかにでも繋がっているのかと疑いたくなる。
しかし、都築も17歳。
どこでもドアがないことも時空間トンネルがないこともしっている。
この協奏曲は喫茶店内で何かが争っている音だと認めざるを得ない。
すべては沙希のため
ようやく覚悟を決めドアノブに手を掛けた瞬間。
ドアだけ残し店が後ろに移動した。
「・・・・・ぇ・・・・ぇぇぇぇえええええええええ!!!!」
否、そうではない。
何者かがドアに何らかの衝撃を加え、
その結果真正面にいた都築ごとドアが外れ後ろに吹き飛んだのだ。
そう理解した時には、小さな都築の体は後ろのビルに直撃、
さらにドアが勢いよく都築の体をクッション代わりにして着地した。
「・・・・っ・・・・ぐ!!!!!」
都築の耳にベキという嫌な音が響き渡る。
ついで襲ってくる腹部を火箸でかき回されるような激痛が襲いかかる。あまりの痛さに叫び声をあげようとするが
口からこぼれるのは赤黒い血液と微かな吐息だけ。
ああ。わたし しぬんだ。
凄まじい激痛の中、都築の意識は深い闇の中に落ちていった。
「あちゃ~・・・クルスのせいだぜ??こんな美少女殺しちゃって。」
「・・・うるさい。もとあといえばあんたがPC陣取ってるから・・」
見るも無残なサンドイッチにされている少女をみながら
クルスとファウスは雑談を交わしていた。
目の前の少女は内臓が破裂し全身の骨が拉げている状態だった。
きれいなのは顔ぐらいで後は原型すら留めていない。
完全に即死状態である。
そんな光景を目にしながら彼らはさして気にも留めていないようだった。それはそうだろう。そんなもの見慣れてるのだから。
「んふふ・・・こんな美少女だもんvエンバーミングさせてもらっても罰はあたらないさvこちとらむさ苦しい生活にはうんざりさv」
ファウスは少女の顔に舌を這わせながら甘く囁く。
伸ばし放題の金髪を背中で括りやけに青白い肌、
ゆるやかに笑みを浮かべる美しい顔だちを妖しく魅せている眼鏡から覗く吊りあがった紅い目。
どこまで病的に美しい男に少女の死体はよく似合っていた。
「・・・・あんた最初からそのつもりだったろう。」
適当に切った感が漂う人ではありえない鮮やかな緑色の髪をうっとおしげに掻きあげながら溜息をついた。
此方の肌も青白くまた壮絶な美形だった。
しかしそれよりも印象的なのは彼の眼のなかで輝くアメジストの様な紫の瞳と顔はおろか全身に広がる縫合痕と青い肌。
もはや肌というか青い布を継ぎ合わせたのかと間違うほど青かった。
「んふvそんなわけないさvただ窓からちらっと美少女が見えて
たまたま君をぶん投げたらその先に立てつけの悪いドアがあって
その先に美少女がいたという偶然に偶然が重なって起きたぼくにとってはラッキー、この子にとっては不運、君にとっても不運な出来事なわけで・・とりあえずエンバーミングしていい!?こんな可愛い僕好みな仔そうそういないしv人助けは大切さ!!人命第一v」
そういいながらファウスは己の服に血が付くにも関わらずすでに少女の死体を抱き上げ凄まじい勢いで店まで運んでいる。
「・・・俺の意見なんて関係ねぇだろうが・・『伯爵』さまにはよ。」
クルスはその光景を見ながらファウスに気に入られた哀れな少女
の運命に同情しながら血まみれのドアを持ち上げた。
よくもまあこんなに血が出たものだと半分感心していると、
血の海の中になにか板状のものを発見した。
そこには金色の文字で「私立蒼穹詩女学園2年 京野都築」と
彫られていた。どうやら少女の学校の名札らしい。
「きょうの・・・みやこ・・ちく・・・?変な名前」
そういいいながらポケットにそれをしまいクルスは再びドアを持ち上げ店に入っていた。
東京裏新宿の一角に佇む寂れた喫茶店の前で少女は体を震わせた。
裏新宿の危なげな雰囲気とは全くかみ合わない少女。
結構な学費で知られる私立女子高校の白を基調としたブレザー姿、
淡い栗色の髪を背中まで伸ばしたストレート、
女性として考えても小柄な肢体、
高校生にしては幼すぎる顔の真ん中には大きな栗色の瞳が
不安げに揺れている。
―ユキ兄についてきてもらうんだったー
彼女は幾度か喫茶店のベルを鳴らそうと試みたが
どうしても鳴らす勇気がでない。
少女―京野都築―は一層体を震わせた。
数日前まで都築はいたって普通の高校生だった。
家庭環境は数年前に両親が他界してから
10違いの兄との二人暮らしだが
両親の莫大な遺産と
大手IT企業の社長である兄の収入で
生活は困ってないし若干妹馬鹿ぎみな兄との関係も良好だ。
すこし変則的な家庭環境だがありえなくはない。
学業の成績も中の上をキープしている。
友人も多くすこし恋とやらにも憧れている。
いたって普通の女子高生だった。
数日前、親友の沙希が殺されるまで。
あの日は兄と自分の誕生日で、
記念にフレンチレストランで食事をとっていた。
午後7時50分ごろに沙希の父から
電話がかかってきた。
「沙希がまだ帰ってきていないうえに電話がつながらない。何か知らないか?」
沙希の家は東横から結構遠い。
しかし30分もあれば着くし何より彼女は夕食を作りに帰ったのだ。
沙希は都築の知る限り約束は必ず守る。
そんな彼女が家に帰ってないなんて明らかにおかしい。
とりあえず6時ごろに東横で別れたこと、こちらからも電話してみる旨を伝え電話を切った。
その後、デパートでプレゼントを買い兄と交換会をして
10時頃家に帰りTVをつけ訃報をきいた。
沙希と都築は幼稚舎からの親友だ。
引っ込み思案で大人しい化粧っけのない清純な印象を受ける都築と
明るく何事も行動に起こし大人びた妖艶な雰囲気をもつ沙希が一緒にいるとよく周りから「仲がいいのが意外」と言われていた。
女性の都築から見ても沙希は綺麗だった。
スラリ長く細い美しい手足、腰まで伸ばした艶やかな黒髪、
黒曜石のような煌きを宿す切れ長の瞳、血を塗ったかのように紅い唇、大きい胸にくびれた腰。
いついかなる状況でも自信に満ちあふれた威風堂々とした佇まい。
それらはどれも都築にはないものだったしほしいものだった。
沙希は都築にとってあこがれの存在だったのだ。
なんとか仇をとりたい!!!!!!
しかし相手は名前も分からない顔も分からない連続殺人犯。
どう考えても無理・・・・・。
警察にでもコネがあれば・・・・。
諦めかけた時、都築のもとに1つの噂が舞い込んだ。
「裏新宿のcafé LuNaに行けばなんとかなる」
それは以前からチャット友として交流があったブラメタという人物が教えてくれた。詳しいことは分からない。
しかし、行かないよりはいいだろう。
そう思い都築は今その店の前にいる・・・・はずだった。
彼女は扉を開ける勇気がなかった。
否、命の危機を感じ取っていた。
扉越しからきこえる音は明らかに戦場のそれだった。
打ち上げ花火にも似た破裂音と甲高い金属音が絶え間なく響き渡り、
途中罵声とガラスの割れる音が混じる虫すら避けて通るくらいあからさまに嫌な協奏曲。
喫茶店の向こうにはアフガンかどこかにでも繋がっているのかと疑いたくなる。
しかし、都築も17歳。
どこでもドアがないことも時空間トンネルがないこともしっている。
この協奏曲は喫茶店内で何かが争っている音だと認めざるを得ない。
すべては沙希のため
ようやく覚悟を決めドアノブに手を掛けた瞬間。
ドアだけ残し店が後ろに移動した。
「・・・・・ぇ・・・・ぇぇぇぇえええええええええ!!!!」
否、そうではない。
何者かがドアに何らかの衝撃を加え、
その結果真正面にいた都築ごとドアが外れ後ろに吹き飛んだのだ。
そう理解した時には、小さな都築の体は後ろのビルに直撃、
さらにドアが勢いよく都築の体をクッション代わりにして着地した。
「・・・・っ・・・・ぐ!!!!!」
都築の耳にベキという嫌な音が響き渡る。
ついで襲ってくる腹部を火箸でかき回されるような激痛が襲いかかる。あまりの痛さに叫び声をあげようとするが
口からこぼれるのは赤黒い血液と微かな吐息だけ。
ああ。わたし しぬんだ。
凄まじい激痛の中、都築の意識は深い闇の中に落ちていった。
「あちゃ~・・・クルスのせいだぜ??こんな美少女殺しちゃって。」
「・・・うるさい。もとあといえばあんたがPC陣取ってるから・・」
見るも無残なサンドイッチにされている少女をみながら
クルスとファウスは雑談を交わしていた。
目の前の少女は内臓が破裂し全身の骨が拉げている状態だった。
きれいなのは顔ぐらいで後は原型すら留めていない。
完全に即死状態である。
そんな光景を目にしながら彼らはさして気にも留めていないようだった。それはそうだろう。そんなもの見慣れてるのだから。
「んふふ・・・こんな美少女だもんvエンバーミングさせてもらっても罰はあたらないさvこちとらむさ苦しい生活にはうんざりさv」
ファウスは少女の顔に舌を這わせながら甘く囁く。
伸ばし放題の金髪を背中で括りやけに青白い肌、
ゆるやかに笑みを浮かべる美しい顔だちを妖しく魅せている眼鏡から覗く吊りあがった紅い目。
どこまで病的に美しい男に少女の死体はよく似合っていた。
「・・・・あんた最初からそのつもりだったろう。」
適当に切った感が漂う人ではありえない鮮やかな緑色の髪をうっとおしげに掻きあげながら溜息をついた。
此方の肌も青白くまた壮絶な美形だった。
しかしそれよりも印象的なのは彼の眼のなかで輝くアメジストの様な紫の瞳と顔はおろか全身に広がる縫合痕と青い肌。
もはや肌というか青い布を継ぎ合わせたのかと間違うほど青かった。
「んふvそんなわけないさvただ窓からちらっと美少女が見えて
たまたま君をぶん投げたらその先に立てつけの悪いドアがあって
その先に美少女がいたという偶然に偶然が重なって起きたぼくにとってはラッキー、この子にとっては不運、君にとっても不運な出来事なわけで・・とりあえずエンバーミングしていい!?こんな可愛い僕好みな仔そうそういないしv人助けは大切さ!!人命第一v」
そういいながらファウスは己の服に血が付くにも関わらずすでに少女の死体を抱き上げ凄まじい勢いで店まで運んでいる。
「・・・俺の意見なんて関係ねぇだろうが・・『伯爵』さまにはよ。」
クルスはその光景を見ながらファウスに気に入られた哀れな少女
の運命に同情しながら血まみれのドアを持ち上げた。
よくもまあこんなに血が出たものだと半分感心していると、
血の海の中になにか板状のものを発見した。
そこには金色の文字で「私立蒼穹詩女学園2年 京野都築」と
彫られていた。どうやら少女の学校の名札らしい。
「きょうの・・・みやこ・・ちく・・・?変な名前」
そういいいながらポケットにそれをしまいクルスは再びドアを持ち上げ店に入っていた。
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