サイレントワルツ~00
闇、闇、闇。
視界に移るものは何も無く。
床も天井も壁も何も無く。
ただ其処には空虚な闇が広がっている。
己以外の存在を確認できない無音の世界。
その世界のなかで少年は走っていた。
靴をはいてないはずの足は自身の血で作られてた赤い靴を。
少し浅黒い肌には汗で濡れた服が張り付き。
表情は恐怖で強張り口からは荒い呼吸音と抑えきれぬ嗚咽が漏れている。
軽くウェーブのかかった黒髪の隙間から見える紺碧の瞳からはとめどなく涙が流れていた。
少年、ダグラス・レナパードはただひたすら走っていた。
一刻も早く夢から覚めるために。
ダグラスがこの夢を見るのは初めてではない。
なのでこの世界からの脱出方法も心得ている。
脱出できなければどうなるかも。
はやく。
はやくはやく!!!!!
にげないと!!!!!
あれから逃げないと!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
ダグラスはただ走り続けた。
それしか道はないのだから。
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